■これまでの歩み
・第1弾:筒の外径とねじ径を混同して、薄っぺらい筒ができた。
  3Dプリンターで31.7mmの筒を作ってみるテスト#1 : ベランダ天体観測の記録 (livedoor.blog)
・第2弾:ねじ径は改善したが、ネジ規格やピッチを有りものを流用しようとして上手く行かず。
  径31.7mmの延長筒を3Dプリンターで作るテスト#2 : ベランダ天体観測の記録 (livedoor.blog)

ということで、今回は潔くカスタムねじを作る方法を調べて、要件をドンピシャで満たすネジ穴を持つ筒を作ることを目指します。

色々調べて、ネジのプロパティファイルを直接編集すれば良いことがわかりました。

C:\Users\kobay\AppData\Local\Autodesk\webdeploy\production\48ac19808c8c18863dd6034eee218407ecc49825\Fusion\Server\Fusion\Configuration\ThreadData

 上記赤字部分は各ユーザーやFusion360のバージョンによって異なりそうなので、適宜読み替えてください。

上記フォルダから、「ISOメートルプロファイル」に該当しそうなファイル”ISOMetricprofile.xml”を適当にローカルにコピーしてイジってみます。

既存プロファイルで一番惜しい「M28×1」は、以下が該当してそうです。
(←でコメント追記)
    <Designation> ←1つの特性をこれで囲む。お作法
      <ThreadDesignation>M28x1</ThreadDesignation> ←メニューの「表示記号」に表示される内容
      <CTD>M28x1</CTD> ←上と同じにしておく
      <Pitch>1.0</Pitch> ←ネジピッチを入れれば良さそう
      <Thread> ←これで特性を囲む。頭。お作法
        <Gender>external</Gender> ←おねじ。今回は後回し
        <Class>6g</Class> ←よくわからず。メニューでは6Hしか出てこない。無視?
        <MajorDia>27.884</MajorDia> ←ネジ径のMax?
        <PitchDia>27.262</PitchDia> ←ネジ径のTyp?
        <MinorDia>26.7375</MinorDia> ←ネジ径のMin?
      </Thread> ←これで特性を囲む。お尻。お作法
      <Thread>
        <Gender>internal</Gender> ←めねじ。今回対象!!
        <Class>6H</Class>
        <MajorDia>28.1572</MajorDia>
        <PitchDia>27.4355</PitchDia>
        <MinorDia>27.0355</MinorDia>
        <TapDrill>27.0</TapDrill> ←M28の28から、ピッチの1を引いた数
      </Thread>
      <Thread>
        <Gender>external</Gender>
        <Class>4g6g</Class>
        <MajorDia>27.884</MajorDia>
        <PitchDia>27.2845</PitchDia>
        <MinorDia>26.76</MinorDia>
      </Thread>
    </Designation>

一方で、今回作成したい特性は
・M28.6、P=0.6

※以下サイト様を参考にしました。
ZWO UV IR カット フィルター CUT filter 1.25inch 31.7mm (electricsheep.co.jp)

上記法則から行くと、今回は以下コードを追加すれば良さそうです。
  <ThreadSize>
    <Size>28.6</Size> ←今回のサイズに変更
    <Designation>
      <ThreadDesignation>M28.6x0.6</ThreadDesignation> 
      <CTD>M28x0.6</CTD>
      <Pitch>0.6</Pitch> ←今回のピッチに変更
      <Thread>
        <Gender>external</Gender> ←おねじVer.は後回し。
        <Class>6g</Class>  ← 同上
        <MajorDia>27.884</MajorDia> ← 同上
        <PitchDia>27.262</PitchDia> ← 同上
        <MinorDia>26.7375</MinorDia> ← 同上
      </Thread>
      <Thread>
        <Gender>internal</Gender> ←雌ねじ
        <Class>6H</Class>
        <MajorDia>28.1572</MajorDia> ←今回対象。ネジ径、ピッチに依存する!!
        <PitchDia>27.4355</PitchDia> ←今回対象。ネジ径、ピッチに依存する!!
        <MinorDia>27.0355</MinorDia> ←今回対象。ネジ径、ピッチに依存する!!
        <TapDrill>27.4</TapDrill> ←28.6-0.6の値に書き換え。
      </Thread>
      <Thread>
        <Gender>external</Gender>
        <Class>4g6g</Class>
        <MajorDia>27.884</MajorDia>
        <PitchDia>27.2845</PitchDia>
        <MinorDia>26.76</MinorDia>
      </Thread>
    </Designation>
  </ThreadSize>

ということで、28.1572~27.0355の値を、今回用に差し替えれば良さそうです。

以下サイトを見ながら、非常に怪しげな計算をしていきます。
Non-Standard Threads with Fusion 360: Schrader to Presta Valve Adapter (trail70engineer.com)

ざっくり以下となりました。
      <Thread>
        <Gender>internal</Gender>
        <Class>6H</Class>
        <MajorDia>28.7420</MajorDia>
        <PitchDia>28.2868</PitchDia>
        <MinorDia>28.0581</MinorDia>
        <TapDrill>27.4</TapDrill>
      </Thread>

※自分用メモ
・P=Pitch=0.6
・d=基準径=28.6
・EI=公差=0.021 
 (※プリントした後で気づきましたが、TapDrillは本来、28.6-0.6=28.0にしないといけないですね。。)

0031

・TD2=よくわからないので、0.106
 (以下から該当するものを選ぶとあるが、該当なし)
0032


リンク先の以下計算式を今回のものにあてはめる。
0033

 既存の値も上記のものと若干異なるため、比例計算して最終的な結果を得る。

★早速、Fusion360を再起動してこれらの設定を反映します。

0034
 ↑
 自作のM28.6*0.6が反映されていることを確認!!

0035

今度こそ、狙いの形のものを作ることができました!
あとは3Dプリンターの実力次第です!!

スライサーに取り込み・・・
0037

 プリント精度に影響を及ぼしそうな、「Layer Height」は最小の値?の0.05[mm]にしておきます。
 0036

 ↓今までの4倍時間がかかりますが、実力把握のためにこのまま進めます。
0038

■仕上がり
IMG_9446
IMG_9447
 ↑ 
 おぉ?! 今までよりも飛躍的に綺麗な仕上がりです!

(やはりコンマ数ミリのオーダーのものをプリントするときは、3Dプリンターの精度を最高設定にする必要がありそうですが、本気出せばこういうのも作れることがわかったというのが大きな収穫です!)

ここまでなら単に仕上がりの機微を見ているだけなのですが、実用性という観点では既存のおねじが入る必要があります。

IMG_9448
 
 入りました!!

 決して無理やり力を入れるでもなく、スカスカというわけでもなく、小気味よい粘り感でスイスイっとねじ込んでいけます!

 いや~達成感で頭が痛い^^


FullSizeRender

 あまりの達成感で動画まで撮ってしまいました。この感動を何とかして伝えたい!


 その後、他のフィルタ類でも同様に試してみました。

 レデューサー2つはどちらもOK
 ↓
IMG_9452

IMG_9454


 SVBONY CLSフィルタもOK
 ↓
IMG_9453


 QHY5Ⅲ462Cのオマケで付いてきたIR850は、やや厳しいか?
 ↓
IMG_9455

 いっとき鬼のように稼働率が高かったIR640は、入りませんでした~
 ↓
IMG_9456

 まぁでも、作成した雌ねじは
・径28.6、ピッチ=0.6mm
 であるのに対して、
 IR640フィルタは、
・径1.125インチ(=28.575mm)、ピッチ=48山/インチ(=0.53mm)
 らしいので、ピッチが合わないのもやむなしという気はします。

■結論:メートル法基準と思われる中華系のフィルタ類は、今回作成した雌ねじパターンが使えそう。引き続き同様の企画の雄ねじ版を作成し、ガッチャンコして延長筒として完成させる。 インチ規格のものは別途作る。

 ということで延長筒ごときにかなり時間を取られていますが、Fusion360の良い練習になっています! 継続検討していきます。