歴1年弱の私ですが、数ヶ月前に色んなセンサの特性を比較して一覧表にしたときに、
「あー、このIMX482っての良いなぁ。これ、くーださい♪」
という気持ちになったことが有りました。
SONYセンサーの世代を整理して理解したい : ベランダ天体観測の記録 (livedoor.blog)

私が482の存在に気づいたのはせいぜい3ヶ月ちょっと前ですが、巷では482を搭載した天体用CMOSカメラの登場を願う声は多い(シベットさんに至っては1年前!)ようで、IMX482で検索するとそのような「熱望する声」ばかりが検索にヒットするような状況でした。

ZWOやQHYのサイトを見ても、今後数ヶ月~数年の発売機種ロードマップのようなものはなく、いつ発売されるやらわからん、という全く期待できない状態だったので、482は「あったら良いな」というドラえもんの道具的な存在となっていたのですが、今月に入って突然発売される!という情報が駆け巡りました。

482熱望歴ポッと出の私も、「乗るしか無い!」とこの祭りに参加したくなったのでした。
(常連さんで占められている小粋な居酒屋にガチャっと入っていく感覚)

情報が駆け巡ってまもなく、ZWO直販サイトで販売開始されていたため、AliExpressで中華通販サイトへの心理障壁が下がっていた私は、何のためらいもなくポチったのでありました。
(価格差についてはアレがコレでゴニョゴニョしたくなるので触れない。)

■入手~夜景テスト:9/13 月曜日
 ZWO公式サイトで9/6に注文し、9/13にはFedexで無事に到着しました。
(AliExpress特有の「倉庫って何や! 仕分けセンターって何や!」という、いつ届くかわからないカリカリ感、あ~生を感じるってこういうことかー感は味わえないものの、そんなもんは本来要らんのです。)

 ハナから天体を取れると思ってなかったので、特に一喜一憂せずに夜間鉄塔を撮影していきます。
以降、ゲインとシャッターを10倍ずつかえて同じ明るさになるように条件を揃えています。

・4秒、ゲイン300≒30倍
4s_gain300.png


・400ms、ゲイン500≒300倍
400ms_gain500.png

・40ms、ゲイン700≒3000倍
40ms_gain700.png

 ゲイン700はさすがにやり過ぎなものの、ゲイン500はギリギリ許容可能、ゲイン300はゲインかかっていること全くわからないレベルです!

 これは良いぞ、前評判通り、かなり感度が高そう!


■ファーストライト:9/15 水曜日
 夜景テストから2日後、晴れ間が見えたので意気揚々とファーストライトです!

 ZWO直売効果もあってか、Twitterフォロワーさん界隈ではひょっとして自分が一番乗りか??

 ASI482MCは高感度というだけでなく、これまで豆粒1/3インチ属だった自分にとっては、1/1.2インチというチップ面積が約9倍!というサイズ感も非常に大きな魅力です。

 これまで豆粒で撮るの難しかったM31を対象に選定しました。

・30秒×9スタック
Stack_9frames_270s_WithDisplayStretch

 あれ?何か久々だからストレッチとか難しいのかな。

・30秒×32スタック
Stack_32frames_960s_WithDisplayStretch

 うーん、微妙なものの渦巻きのゴゴゴ感は出てきたな。今日はちょっと空気の透明度悪いかな。

一応Pixinsightでお化粧

0059

 まぁまぁ、空の状態さえ良ければもっと戦えるだろう、ヨシ。

 そうやって平和な日常にしがみついている間にも、あの惨劇は刻一刻と迫ってきていたのでありました。

■9.18 血の土曜日事件
 9/15はASI482MCのファーストライトを自分だけがやっていた感がありますが、国内代理店経由で購入された方々にも次々と現物が届き始めたようです。

 折しも、9/18は満月期とはいえ台風一過のド快晴!

 「空気透明度ガー」という言い訳は一切許されない環境で、いよいよ複数人にてASI482MC性能検証が始まりました。

 M31でASI482MCファーストライトという儀式を終えた自分は、小粋にM13を導入したりしていました。
0002

その後、近くにあったM27を導入してみたものの、月光の被り?か何かがひどく、赤い縞のようなものが見えてよろしくない感じ。

ここはひとつ、前回と同じM31を導入して空気透明度の違いがどれほど効くか見てみよう♪

・30秒×40スタック
0003


 おぉ!これは前回よりも明らかに良いぞぅ!

 いやぁ~、やっぱりASI482MC最高だなーと思っていたとき、
シベットさんからの強烈な一撃がTwitter上にUPされたのでありました。

※勝手に転載

 えぇ!!?? まさかそんな!

 しかし、次々に投稿されるASI294MCとの比較画像を見ると、
 ASI482MCは使い物にならない
 という事実が火を見るより明らかです。



なぜだ・・! 自分のM31は80回スタックしてM31の構造を出せてきているのに・・
0006

しかし、その後に別天体としてパックマン星雲を電視観望してみたところ・・・
0007

 これは確かにおかしい! 淡すぎる!!

 なんということでしょう、自分は正常性バイアスに思いっきり目がくらんで、実験的事実から目を背けるような解釈を重ね続けていたのです!!

 思えば兆候はいくらでもあった(9/15ファーストライト時点で、30秒露光にしては感度低い?という指摘あり)のに、「最もシンプルな説明」を避けていたのです!

 いやー普段ニュースとか見て、「ったくこいつらは・・・リスク管理がなってないな。楽観的すぎる。信じたいことを信じ込もうとしているだけやないか。科学に基づいた思考をだな・・」と散々調子に乗っていたものの、自分を全く客観視できていなかった! ショック!!


とはいえ、いつまでも自己憐憫に浸ってはいれません。

諸々の情報を総合すると、
 「こ、これは、ASI482MCちゃんの実力じゃないよね?? 
  きっとZWOのドライバソフトか何かがおかしいんだ、そうなんだ」

という理知的な議論結果が得られ、ドライバの更新を待とうという方針になりました。


■9.20 ASI482MC反転攻勢始まる(か?)
 9.18血の土曜日事件後、傷心ながらも普段の生活を続けておったわけですが、
Twitter上では当然、上記惨劇の話で議論が尽きないわけです。

 なんやかんやとあった(適当)のですが、cockatooさんの超・超有益な情報が!!
 ↓
New Zwo drivers, adding ASI482MC and ASI485MC - SharpCap Forums

a new SDK needed in SharpCap to support those models - I will add this to next week's update.

Sharpcap管理人のRobinさんが、SharpcapをASI482MCすると言っている!
しかも9/7時点の書き込みで来週更新、ということは既に更新されている??


Downloads – SharpCap – Lunar, Planetary, Solar and Deep Sky Imaging. EAA and Live Stacking.

 9/13リリースの直近のリリースノートに以下の記載が!!
  • Updated SDKs from Moravian Instruments, QHY, ZWO
 うぉおおぉおおお! USA! USA!(違)

※バージョンUPによる挙動はシベットさんの記事に詳しいです。(勝手に転載)
ASI482MC、平穏のセカンドライト : 浮気なぼくら (livedoor.blog)

ということで、9/20は深夜から晴れ間が見える予報だったので、全力スタンバイして半分徹夜するぐらいの気持ちでリベンジに臨みました!!

(ちなみに更新前後でカメラとしてどういう挙動変化を示すか、は昼間に検証して減少を特定したので、それは別途記事にしたいと思います。)


以下検証時点では、Sharpcapのバージョンは 8173ですが、9/21現在、更にその次のバージョンがリリースされているようです。


・網状星雲:30秒×4枚
0013

 わずか2分! 前回の9.18血の土曜日事件のときは、2分ではこんな写りは絶対無かった!(いくら天体が違うとはいえ)

 これはSharpcapのバージョンUp効果ありそう!!

・網状星雲10分経過
0015

 見た目のインパクトは大きく変わってないものの、SNが断然良くなっています。

 コレですよ!これ! 電視観望といえばこの数分で「ドン!」とインパクトがあって、その後はノイズが減っていくのを安心感を持ちながらゆったり眺める感じです。

 (先日のは、あれ?薄いな~ スタックしたら良くなるかな? あれ? うーん?という非常に緊張感を強いられるものでした。。)

・M31 30秒×4枚
0001

 血の土曜日事件(しつこい)のときの40分相当のスタック画像よりも、今回の2分画像のほうが遥かに良い!!
 これがSDKアップデートの効果やあぁああ!!
(アニメ版の”はたらく細胞”で、B細胞が「これが獲得免疫の力だぁああ!!」というシーンがあるのですが、ご存じの方いらっしゃるでしょうか? あれと同じトーンで上記を言いたいです。知らん人はまさに「知らんがな」の世界ですね、はい)


・同40枚スタック

0004

 確実に良くなっている! 何回見ても嬉しい!

 が、そう浮かれてばかりもいられません。

 血の土曜日事件のときにシベットさん検証で、ASI294MCとの実力差をまざまざと見せつけられたM33も検証する必要があります。


・M33 30秒×4枚
0005
 
 あ、淡い・・・ あぶり出そうとすると周りの変な被りが目立つ・・・

 でも、普通のCMOSカメラ並?の性能は出ていそうです。スタックを重ねます。

・同40枚スタック
0007

 うーむ、初回の4枚スタックからあまり印象が変わりません。

 果たして、SVBONY CLSでなくQBPⅡを使えば、ASI294MCに追いつき、追い越せるような絵が撮れるのだろうか??

 この辺りは、最適なゲイン、シャッター設定で1枚1枚の絵を撮る必要があって、その見極めはSharpcapのSmartHistgramなる機能が大いに役立ちそうです。
 これも別途記事にしてまとめつつ、次回検証時にはベスト設定でもう1回撮ってみたいと思います。

 以降は、興味の赴くままにひたすら天体を導入していきます。

・ちょうこくしつ座 NGC253:30秒×4枚

0008

 検証はさておき、この銀河は意外としっかり映るので楽しいです!

・同25枚スタック
0009


・M42  30秒×4枚
0012

 まぁコレは普通に明るいので、下手したら前のSharpcapバージョンでも写っていたかもしれません。性能評価の指標としては使いづらし。

・馬頭星雲:30秒×4

0013
 
 1/1.2インチサイズのセンサのおかげで、f=450[mm]のスカエクでも燃える木星雲と同じ画角に収められるのがスバラシイ!!

・同60枚スタック
0014

 ランダムノイズは減った代わりに、縮緬ノイズが目立ちますな・・
 ホットピクセル未補正による点がつながって線になったものも目立つ・・

 が、これはようやくASI482MCが普通のCMOSカメラあるあるとして悩めるスタートラインに立てたということでもあるので、一部歓迎しつつ、使い方によってどこまで回避できるか探っていきたい!

・バラ星雲:30秒×4枚
0015
 
 もともと明るい星雲ということもあるけど、これが撮れるのを見て、ASI482MCは必要最低限のレベルに達していることは確信!

同73枚スタック
0016


※全体を通じて
 とにかくホットピクセルが多い! 多すぎる!!
 ダークを引いたら引いたで、過補正になって黒い点になる画素も多数あるし、なんとも与し難いです。
 これも前述のSmartHistgramから導出される最適設定である程度回避できるのかな・・・


・電視観望時に撮っておいた30秒FITSファイルの塊を、Pixinsightでスタック

0031

0021

0023

0025

いや~汚いけど、きれい! 

このベールをペリッと剥がせれば、さぞかしキレイだろうなぁ~

使い方でペリッといければ、ASI482MCは超強力な電視観望ツールになりそう!!

と、ホルホルしていても仕方が無いので、血の土曜日事件につながった反省も踏まえて現状の課題をしっかりと確認してみます。

上記画像を拡大!

0032

0022

0028

0027

う、うへぇ~汚ねぇ~!


しかし目を背けてはいかんのです!

いかにこれを無くすか、そもそも発生させないように使うか、が直近の課題です!


まずはSmartHistgram(しつこい)から導出される最適設定でどうなるか、次の晴れのときに検証したいと思います!


■まとめ
・電視観望のゲームチェンジャーとなりえるASI482MCが発売されたので飛びついた。

・こんなもんかな?と思ってたけど、明らかにおかしいことが判明した=9.18血の土曜日事件

・問題がSharpcapのバージョンUpで一部解決されることを確認できた。

・ホットピクセル含めたノイズが多いことが直近の課題。

 有力候補として、SharpcapのSmartHistgram機能を活用して、低ノイズかつ8bit以上の階調を維持した露出設定を導出、その状態で電視観望してどうなるか?を今後検証したい。


★教訓:
 ・初物には気をつける。

 ・実験的事実と希望的観測を混同しない。