#1振り返り:安価な0.5倍レデューサーを入れると明るい星にコマ収差?が出るため、
 何が原因か調査しています。  

(過去にレデューサー起因と思われる収差が盛大に発生した可哀想なM42)
M42_PCC_Dnz

前回は、レデューサーをバラして組み直すことでレンズチルトを直したことにして、
収差が解消されているか確認しようとしましたが結果変わらず、
レデューサーあるときのみコマ収差が発生するという状況でした。

■上記踏まえて今回作戦
 ・前回コメントいただいたUTOさんアドバイス(センサに近づける)、
  HIROPONさんアドバイス(裏表ひっくり返してみる)を元に、  
  T2延長筒内でレデューサーねじ込み向きを逆にすることで、
  裏表逆転とセンサに近接させることを両取りする事を狙います。

早速、レデューサーねじ込み向きを逆にします。
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このままでは鏡筒側へのねじ込みシロがないため、
更に延長筒をかまして鏡筒に取り付けていきます。
(フィルターアダプターを入れている分、延長筒がガッチリねじ込みきれてないのが気持ち悪いですが。。ここで斜め取り付けが生じているとは思いたくない。)
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まずはベランダから見える遠方の鉄塔自体が映る明るさにして、
鉄塔を利用してピントを合わせます。

ガイド鏡で導入して・・
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主鏡側でピントを合わせます
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その後、露光時間を絞って光源が星っぽく映るようにします。
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うーん、”星像”がいまいちシャープさに欠ける気が。。

その後、レデューサー無し構成にして同じことをやっていきます。

まずは鉄塔にピントを合わせて。。
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露光時間を絞ります。
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拡大↓
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お、やはりさっきより”星像”がシャープな気が!


ということで横並び比較してみます。
左:レデューサーあり、右:レデューサー無し
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レデューサーありのほうが、各光源間の距離は小さい=画角縮小効果はあるものの、
光源一つ一つがボヤッとボケている用に見えます。

「コマ収差」らしい彗星の尾が一方向に伸びているようには見えないため、
単純なコマ収差では無いのでは、という気がしてきました。

検証のために、光源を画面内のいろいろな位置に動かして見てみます。

レデューサーあり
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レデューサー無し
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はい、前言撤回します。
キレイに彗星の尾のようなものが見えているので、やはりコマ収差なのかなと。

更に前回、実際の星雲画像では画面全体に同じ方向にコマ収差が出ていたため、
レンズチルトが原因ではと考えたのですが、今回は明らかに画面中心基準で
点対称に収差が出ているため、像高由来のコマ収差でないかと思えてきました。

よくよく考えると、口径50[mm]、焦点距離242[mm]と約F5のEvoGuide-50EDに対して、
レデューサーで焦点距離2/3倍することで、約F3.3と(望遠鏡にしては)非常に明るいため、
そこで周辺から入ってくる光が悪さして収差が出ているのでは、
と光学素人なりに考えています。

と、ここまで考えたものの、
そもそも画面中心のときからレデューサー有りは光源がシャープに結像してないため、
それは関係ないかも?と思えたり、
一方で開放F1.4などの昔のレンズを開放端で使うと画面中心でも描写甘々だったりするので、
画面位置など関係なくF値が小さすぎるのが問題では?などなど、
考えがまとまらずに混乱してきております

次、気軽にお試しできる検証としては、絞りのような作用をどこかで持たせることでしょうか。
対物レンズ側を単純にドーナツ状に遮蔽すれば良いのか、色々試してみようと思います。

※今回配置のレデューサー効果確認
 以下、鉄塔の大きさ変化を画像から測定してみます。
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↑レデューサー無し:sqrt(247^2+236^2)= 342[pix] ・・・(A)


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↑レデューサー有り:sqrt(158^2+201^2)= 256[pix] ・・・(B)


∴B/A=0.75倍と、前回0.67倍から若干縮小効果弱めでした。

絞りを入れるとせっかくの光量Upが損なわれてしまいますが、
「自分がレデューサーに期待しているのは画角拡大のみだ」
との考えで気にせずに進めます。

EvoGuide-50ED素の状態:D=50[mm]、f=242[mm]、F=242/50=4.8 に対して、
f=242*0.75[mm]で上と同じF4.8を実現するには、D=242*0.75/4.8=37.8[mm]となるため、
4センチぐらいの穴が空いていて、EvoGuide-50EDの先端に被せられるような
適当なものを探します。

※チップスター、プリングルスのような”専用部品”を調達するのは気がひけるので、
 自宅に適当なものが無いか探します。

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厳しい選別を経て、以下を”絞り”として採用しました。
付けやすさ優先で結局D=3cmも無いような絞りに。
DSC00830


※春色の装いとなったEvoGuide-50EDさん
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暗くなるのを待ってから同じ鉄塔を写します。
(雨で空気がかなりもやってました。)

・レデューサーあり、”絞り”あり。画角内の左上端に光源を配置

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・レデューサーあり、”絞り”無し。画面内の光源位置はそのまま

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※ピントは都度、慎重に合わせ直しています。

どうでしょう? これはビンゴではないでしょうか?!

”絞り”を入れることでコマ収差が劇的に軽減されているように見えます!
暗くなるものの、画角を広げたい、かつコマ収差も出したくないときは、
この絞り作戦で行こうと思います。

※これは対処療法で収差を無くしたというだけであって、
 厳密には「収差の原因切り分け」ができたわけではないですが、
 F値が小さくなりすぎることによるスペックオーバーの何かが発生、  
 それが絞りで改善され、鏡筒本来のパフォーマンスのまま広角化できたと捉えています。

※念の為、絞り有無で画角が変わらないことは確認済みです。
・絞りあり、レデューサーあり
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・絞り無し、レデューサーあり

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かなり長くなってしまいました。。

最後の検証として、D=90[mm]、f=1250[mm]、F≒14!の
AZ-GTIのオマケでついてきたMak90にてレデューサー有無比較をしてみます。

Mak90、レデューサー無し

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うーんレデューサー無しの時点で明るい光源の周りにゴーストが出ています。
マクストフカセグレン特有なのか、何か調整不足なのか切り分けできていませんが、
今の本題で無いのでスルーします。

同レデューサーあり
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最初は「お、レデューサー入れることで逆にゴースト消えた?」と思ったのですが、
よくよく見るとゴーストが大きくなってただけでした。
(ゴーストがドーナツ状で、マクストフカセグレンの前面の作りがそのまま見えているような気が。。)

ただ、F値が非常に大きいこの鏡筒ではレデューサー有無で先程のような
コマ収差の劇的な違いはなかったので、自分の中ではF値がコマ収差に効いているのでは、
との思いが強くなってきております。

というわけで、今回の検証の結論=F値を攻めすぎると収差出るので絞りでお茶を濁す、  
としたいと思います。

※オマケ:夕方に同じ場所を撮った写真。流行りの近赤外っぽい絵が撮れて、  
 これはこれで楽しいです。
(スナップ写真でCMOSカメラ持ってうろついてたら変態扱いされそうですが。。)

nir